【連載】Life with India! vol.8

こんにちは、運営の乾です。
「Life with India!」第8回目は、望月せりなさんにインタビューをさせていただきました!B967C741-AA1B-4782-B252-B6B1ACCB6162「Life with India!」とは…
インド在住の人、インドと日本を行き来して仕事をしている人、日本においてインド絡みの事業を立ち上げた人、インド旅行にハマっている人、日本でインド料理を食べ歩いている人やインド料理を作っている人、インド人と国際結婚された人、インド映画やダンス、ヨガ、語学にハマっている人などなど…
日頃からインドに深く関わる人々に突撃インタビューをさせていただく不定期連載企画です。

せりなさんは大学卒業後、小学校教諭を経て、現在は本業の傍ら『NPO法人ジュレー・ラダック』で精力的に活動し、ラダックにまつわる様々なイベントを手掛けております。

日本国内でも大ヒットしたインド映画『きっとうまくいく』の舞台として一躍有名となったラダック。
過去の当連載の中でも「オススメの観光地」としてこの地名が複数挙がってきました。

訪れた人を惹きつけてやまないラダックの魅力や、なかなか知りえないラダックの過去・現在・未来を、今回はロングインタビューにて皆さまにお届けいたします!
それでは、早速スタートさせていただきましょう!

 

Q1.ラダックを知ったきっかけを教えてください。

A.2014年、当時の仕事の夏季休暇と合う海外スタディツアーを無作為に探していた時、一番日程に合うツアーが『ラダック』だったんです。
つまり『偶然』です。
日程が合うのであれば、インドネシアでもアフリカ諸国でもどこでも良かったんですね。

Q2.初めてラダックに行ったのはいつですか?また、その時に抱いた感想を教えてください。

A.2014年の8月です。
なんの前情報もなく、「インドは危ない!」と周りからも言われていたのでかなり身構えていましたが、まったく危ないこともなかったので、むしろ拍子抜けしたのを覚えています。370C8E9D-2D68-4EBF-BF0B-038058E90029Q3.現在の仕事やNPO法人での活動内容を教えてください。

A.現在は本業として整体サロンで働いています。指が痛いです。
仕事はいつも転々としていて、自分でも「生き方の脊柱がないなぁ(整体では脊柱のバランスが重要なのに…)」と思っています。

私が関わっている『NPO法人ジュレー・ラダック』という団体は、「ラダックと日本を通じて持続可能な未来を創造していこう」という理念のもと国内外で活動しています。3B26026C-2BAA-46C0-9852-F5132E3917DA当団体のボランティアやスタッフとして、国内のイベントの企画(具体的にはラダック語講座・ラダック料理屋・説明会やその他イベントの企画開催)などを行っています。
ボランティアとして関わっていた当時から、とにかく私がやってみたいこと、やれそうなこと、誰かの助けを借りればできそうなことなど、気ままに思いつくままに活動していました。

Q4.ラダックに深く関わっていこうと思ったいちばんのきっかけは何でしたか?

A.ラダックの人々が自分の家族のように迎えてくれたこと!
そして、日本でもラダックを介して出会った人々が家族のように親しくなっていったことです!なんでもそうですが、結局『人とのご縁』です!DF2988EC-1AB1-402D-A66D-2A8770E8A10CQ5.ラダックの公用語やその特徴を教えてください。

A.公用語はラダック語かと思います。
でも、ラダック語自体がチベット語の方言的な言語なので、パキスタン近くに住むラダック人はバルティ語を話したり、南部のラダックでは発音がチベットに近い発音だったり(Sを読まないとか)、国境ラインよりも民族ラインのほうが色濃い印象です。

面白い話があります。

チベットの経典に書かれている言葉はお経としてほぼ同じ発音で読むのですが、チベット、ブータン、ラダックなど場所によって文字の発音が違うので、日常に使われる話し言葉にも地域差があります。(例えば、チベットならStanzinをテンジンと読み、ラダックではスタンジンと読みます。)
漢語を中国読みしたり、日本人のように書き下して読んだりするのと似ています。

チベットでは、チベット経典と普段の話し言葉にかなり差がありますが、ラダックは経典読みに近い発音をするので、お経と話し言葉が似ているのです。
でも、ここで最も面白いのは、今のパキスタンとラダックのボーダーラインに住むイスラム教バルティスタンの人々は更にお経発音とほぼ同じように話すのです。
イスラム教の人々が、仏教の経典に最も近い言葉を使うというのも、歴史的背景がありますが、宗教融和で有名なラダックならではの逸話ですね。

ちなみに、他にヒンディー語や近代教育を受けている人は英語も話せる人もいます。また、日本語を話せるラダック人も数人いますよ。

Q6.ラダックの交通事情を教えてください。また、日本からラダックへの経路も教えてください。

A.交通手段は、つい数十年前までは徒歩や馬などでしたが、最近は自動車の普及が進んでいます。ラダックの主都・レー近郊の村では一家に一台は所有しているようです。
観光客はタクシーや乗合バン、バスなどを利用するかと思います。
空港はひとつあります。
以前は軍事用滑走路でしたが、政治的にも大活躍したバクラリンポーチェという偉いお坊さんが民間滑走路として開いたようです。

日本からの経路は、まずデリーのインディラガンディー空港へ向かい、朝のみ運航しているレー行きの国内線に乗り換えると1時間程度で到着します。
フライト時間は短いですが、ここで高度が3000m以上も上がります。
空からのヒマラヤ山脈の眺めは荘厳で地獄の針山のようです!E01A00C4-38A0-4C8A-809D-CB334371687Aちなみにラダックには『ナムキラ』という峠がありますが、ナムは『空』という意味で、『空に突き刺さる程の鋭い峠』の意味からきているそうです。C529B4BC-3BAC-4175-B687-1D250365639Cなお、空路ではなく陸路で向かうのであれば、デリーからマナリまでバスで行き、そこから乗合タクシーで休憩含め20時間程度です。
陸路の魅力は何と言っても『息を飲む大大大絶景』です。
ちなみに、私はマナリに知り合いがいるので、いつもマナリから陸路でラダック入りしています。

Q7.ラダックの医療や衛生事情を教えてください。

A.医療に関しては、大きな病院(Sonam Norboo Memorial Hospital)がありますし医療費も高くないので、観光客が体調不良になった場合、海外旅行保険に加入していなくてもあまり不安はありません。
入院してもせいぜい1500円程度だったような記憶です。

ラダックに行かれたら必ず見て欲しいのは、その近代病院の隣に併設している『チベット伝統医療アムチ館』です。

現在の日本含め、世界的な流れも西洋医療が主流ですが、ラダックなどチベット文化圏では『アムチ』といわれる伝統医がいます。

アーユルベーダ医学と中国医学に影響を受けているといわれているチベット伝統医アムチは、診察では主に『脈診』に加えて、『舌診・尿診』を行うそうです。
人の脈から何百という打ち方の違いを感じ分け、その人の身体・精神の特徴や、どこが弱っているかを診断するんです。まさに神業ですよね。
そして、アムチは単に『怪我や病気を治す医者としての技術』だけでなく、『医者自身の人格』も問われるそうです。そのため、アムチになるには僧侶のような仏道修行も行うそうです。
ちなみに、外国人として初めて『アムチ』認定された方、実は日本人です!
小川康さんというとんでもない方です!長野で活躍されていて、私も一度お会いしたい憧れの人です。

また、トイレは伝統的には水を使わない『堆肥トイレ』が主流ですし、レー周辺の村を除けば、現在でもほとんどの家庭においてこの伝統的で持続可能な自然に優しいトイレを利用しています。40E61CEA-638F-4BE7-97D5-B4453A459C04ただ、トイレは二階建になっており、仕切りを開けると中にポツンと割とデカい(大人の肩幅程度の)穴!!があるだけですので、初めて見たときは色々と悩みました。(落ちたらどうしよう、はみ出さないか…など)

あ、ちなみに、このトイレには過去に二人の方が携帯を落としましたので、皆さんも気をつけて。

Q8.ラダックの食料事情を教えてください。

A.まず、『大麦と乳製品』が伝統的です。
これはチベットも同じかと思います。高地のため農耕期も限られているので、栽培できる農作物も必然的に限られてきます。
その中で、荒れた土地でも栽培できる大麦やじゃがいも、少し標高が下がると小麦、ソバ、グリーンピースなどが一般的な食料です。B2C29C64-AE1F-4DAC-BDE4-F775BFCE9957そして乳製品ですが、おそらく栄養的にも、生活的にも家畜の存在なしにはラダックの人々はこの厳しい環境で生きてこられなかったと思います。
ただ、近年ではインド本土から米や多種多様な農作物、既製品、外来品が毎日ド派手なトラックに積まれて排気ガスを撒き散らしながら大量に入ってきます。
ラダックの若者は、伝統的な大麦料理よりもお米の方が好きという人が多いですね。

また、名産品としては太陽の光をいっぱい浴びた瑞々しくて甘い『アンズ』です。16FE3CAC-CE7E-4190-B5CE-1B6365A50DD9アンズの実はそのまま食べてもよし、乾燥してドライフルーツにしてもよし、つぶしてジャムにしてもよし。1B421DD4-F02E-40CC-B9B8-8CFE8B55832A種からアーモンドを取り出し、すりつぶして作ったアンズオイルは至高のオイルで、香り高く保湿力も最高、天然のUV成分も含んだ正にラダック大自然のエッセンスです!ラダックの人々は赤ちゃんに使うことが多いです。2520A1E3-BE56-48CC-ABBD-EF3361A2940AQ9.ラダックの人々はどのような住宅に住んでいるのでしょうか?また、インターネットの普及率やスマホ・携帯電話の所持率は?

A.皆、自分の家族親類と住む家があります。家は大きく、部屋も細々とたくさんある印象です。
家には必ず一番良い場所に『チョカン』と呼ばれる仏間があり、そこには偉いお坊さんの写真や仏像、仏画などが飾ってあり、毎朝お祈りとお勤めを行います。

興味深いことは、現地の人々は伝統的に自分たちで自分の家を作っていたことです。
メインの材料は、土や砂を混ぜ合わせて日に干した『日干しレンガ』です。C3808286-0A4E-40FF-AF4C-92C48534F42Eそれを延々と作って積み重ねて行き、周りに泥や砂を塗っていって、白色と窓枠などポイントは赤っぽい自然の塗料を塗っていきます。
作り方は単純なので自分たちの手で作れますし、高度な専門知識もいりませんから、やる気と忍耐力さえあれば経済的な豊かさは関係なく家を建てられ、誰でも雨風しのげたんですね。(元々、ラダックでは雨はほとんど降りませんが。)

土や泥で作った壁は熱容量が大きくて熱しにくく冷めにくい性質から、昼間は涼しく、一度温められると蓄熱してくれるので日中日差しがあたることで夜は暖かいんです。…とは言っても、5月には氷点下になるラダックはやはり寒いです。5126E900-2FEA-4B98-85BB-0AB4C35ACFCDもし行く機会があれば、家のみんなが集まるいわゆるリビングの天井をぜひ見上げてみてください。必ず『穴』があります。それが煙突の穴で、冬はストーブに煙突をつけてガンガンに火を焚いて部屋を温めながら料理もしちゃいます。
さらに、そのストーブを囲んで家族みんなが集まるので一家団欒もできて、まさに一石二鳥ならぬ一石三鳥ですよね。55EDDF1B-06F0-4A86-8E3F-F518430761EAそういえば、ラダックの昔の家では、一階は動物小屋として使用し、2階を居住部屋としていたようです。それはなぜかというと『暖をとるため』です。
どうやら動物たちの体温を床暖房としていたようなのです。面白いですよね。E2A8C916-98F6-4A82-946B-8B7B0633339Bラダックの人々の知恵は、限られた資源で氷点下30度の過酷で長い冬をどうやって生き抜くかということに集結されていました。0D2DF4AB-3E8D-439E-B573-3C196D9F1DFBでもただ生き抜くのでなく、いかに楽しく、平和に、ということも加えられます。
これがラダックの人々の逞しくも明るく優しい人柄の理由だと思います。7AB1827D-002A-4F7B-9E16-5B4D70BBA69Eなお、インターネット普及率はまだまだ低く、街でインターネットを使える場所は増えてきていますが、回線の脆弱性や頻繁に起こる停電によって非常に不安定です。電話回線でさえ切れたりしますし。

たまにインターネットが繋がると、ラダック人の複数の友人から「ジュレー!(※ラダック語でこんにちはの意味)」って一斉にメールが来るので「あ、ネット入ったんだ」ってその時に思います(笑)

そして、携帯電話はみんな持っています。いわゆるガラケーの人が多いですが、今風の人や若者はスマホが多いです。
ちなみにiphoneを所持していると、「おーーー」って感じで周りから羨ましがられます。

Q10.ラダックの就業事情を教えてください。

A.ラダックの産業は沖縄と似ている気がします。『観光』と『軍事』です。
若者の人気就職先トップ3は(持論ですが)旅行関係・軍隊・公務員にほぼ限られています。

そもそも現金収入を得られる仕事自体が非常に数少ないのですが、近代教育を受けた子供達は学位を片手に、この就業争奪戦に自動的に参入させられます。08F215C0-C40D-4208-96F1-7692051021F1かつての日本もそうですが、農業や伝統的なモノ作りへの職離れは日本以上のスピードかもしれません。
こういう仕事は彼らにとってナンセンス。なぜならお金があまり稼げないから。そして格好良くない。C649CA72-9F9E-435E-BCEF-E95CBB8927AF農家の親でさえ子供達には「お金を稼げる仕事を取ってきてほしい!」というわずかな希望を託して幼少期から主都近郊の私立学校に高い学費を払って通わせるんです。
いい成績をとっていい学校に行く若者の多くはデリーやジャンムーなどを目指し、ラダックから出て行ってしまいます。
それでも、家族や故郷を愛する気持ちが若者たちに受け継がれていることは一抹の救いかもしれません。
しかしながら、ラダックから若者が流出してしまっていることは将来的には大変な問題かと思います。

Q11.ラダックの人々はどのような人柄が多いですか?

A.朗らか、平和的、温厚、ゆったり、優しい、世話好き、恥ずかしがり(でも慣れると馴れ馴れしい笑)。F612DEE8-3352-4206-9EB7-D38C094FAC7D「これはチベット仏教の影響なのでは?」と、はじめの頃は思っていましたが、イスラム教の村へ訪問した時も多少雰囲気は違えど、やはり同じように朗らかな人が多かったので、きっと土地柄もあるのですね。

特に年寄りはめちゃくちゃ明るい人が多いです。歯がないしわくちゃの顔をさらにしわっしわにして大笑いします。
また、特に女性は噂話が好きです。コソコソ何か言ってたりしているので「何を話しているの?」と尋ねると下ネタだったりするので思わず吹いたこともあります(笑)965D81F7-98C2-4541-B893-DC2CDD9E4BAA日本人のような遠慮・謙虚さが美徳とされる文化もあるので、近所の人が「ご飯食べていって!」とか言って、「いいよいいよ!」「いやおいでおいで!」「いやいや悪い悪い!」「何言ってるの!」「いやいや」と断りながらもすでにその人の家の方向に歩いていたりして。

このように、日本人と文化や思想が似通っている部分がラダックの人からも親しみを持たれやすいところなのかもしれません。8DF0F15E-5A87-4F9F-9FA7-4F35DDCE319BQ12.ラダックの恋愛・結婚事情を教えてください。

A.まず、個人と個人がパートナーになるという二人だけの出来事ではないですね。〇〇家と△△家の同盟宣言みたいなものなんです。
「今後、どんな幸も不幸も共にしよう」という、家族親戚の運命共同体を作っていく非常に大切な儀式なのです。
そのためか、恋愛結婚は稀で、両親が選んだ相手と結婚をさせるお見合い婚が主流でした。963881EB-38E9-41AE-B3BE-F7ED6DD5ABCAその時に重要視されるのは、(多少はありますが)容姿でも年収でもなく…
その人が『ナンパであるかどうか』ということらしいのです。

ナンパをする人という意味ではないですよ(笑)
ラダック語でナンは『中身』、パは『人』。要は『中身のある人』。
「いい人で、人のためにもよく働く人なのか」ということです。素敵ですよね。

その人がナンパかどうかというのは、その人の周りの人をみればわかります。
親、兄弟、親戚など…。
いい人はいい人同士、結婚に結びつくんです。
こういう指標がラダックにおいて大切にされてきたことはまぎれもない『財産』です。私たちも大いに学ぶことがあります。70553B37-0486-45B7-85C4-DE5943C61FDEQ13.ラダック初心者向けのオススメの観光地はありますか?また、ベストシーズンを教えてください。

A.観光地にはあまり出向かないのであまり分からないのですが、一般的には、
・パンゴン湖(インド映画『きっとうまくいく』のロケ地)714E440B-9623-4E5F-BD14-B9C99E53823D

・ヘミス寺(ラダックで一番大きい寺院。祭りが盛大)66D5E598-F4FC-4332-BF9C-926C20EFD0DB

・ザンスカール(ラダック最奥地で秘境中の秘境)ですかねぇ。53E7A147-E73B-41C3-96D8-FBFD921CAA85私個人のオススメは『村』です。
どの村もオススメなので、まずはご自身が気になる村で3泊ホームステイをしてみてください。そして、ラダックの人と同じ釜の飯を食べ、牛の放牧に一緒について行ったりしてみてください。49CB0B21-6300-4CC7-8583-0D4BDB6FF0B6素晴らしい景色や派手なお祭りにも勝る、『人』という一番大きな宝物を見つけることができると思います。

ラダックの一般的なベストシーズンは6月~9月です。
夏は緑豊かで、現地の人々もウキウキと開放的な気分です。日本でいう『春』のような気分です。CCD138D2-1FEA-4921-A3BE-0B970152B2C8でも実は、本当のオススメは冬のシーズンです。
ラダックの醍醐味はずばり『村×人×冬』です!

ベストシーズンにあたる3ヶ月ほどの夏の時期は楽しくて彩りも豊かですが、ラダックは年間の半分以上が冬ですから、冬にこそ人々の生の息遣いを感じることができるのです!
でも、寒いです。

Q14.あまり観光客が踏み入れないような、とっておきの秘境があれば教えてください。

A.『リンシェッド村』という村は、有名地・ザンスカールに向かう途中の通過村としてつい見落とされがちですが、素晴らしい村です。人々は優しく、逞しく、よく働きます。867DFB6C-C0DF-4E13-86E8-E64C798BE84Bんーーーでも、他の村もまた違った良さがありますし、観光客自体はどこにでも見かけます。
正直、世界の裏側や月の表面まで見ることができてしまうこの時代に、秘密の安居地を見つけるのはラダックでも難しいかもしれません。
デリーなどに行くとそのあまりの騒々しさから、ますます感じますが、本当の秘密の桃源郷というのは『自分の心の内』に見つける以外ないのですね。BC7A8E3B-E81C-4577-A1D2-A56A2CB7DF0BQ15.高山病対策を教えてください。また、万が一高山病になってしまった際の現地での病院での対応はどのようなものでしょうか?

A.有効な対策は、ラダック到着後の24時間は必要以上に歩き回ったりせず、エネルギーをできる限り消耗しないようにすることです。

ラダック到着後は、つい気持ちが高揚して散策をしようとする人がいますが、そういう人が特に高山病にかかりやすいです。
水分を多めに摂り、食事量は気持ち少なめにして、ゆっくり過ごすことが一番大切です。

万が一体調が悪くなったら、主都・レーに大きな病院がありますので、そちらで酸素吸入をさせてもらえます。
5〜6時間ほど吸入していれば大抵は回復します。
ただ看護婦さんは高山病の対応に慣れているからか、患者への扱いは基本的に粗雑ですので悪しからず(笑)

Q16.年々観光客が増加傾向にありますが、現地での変化は起こりましたか?

A.あります!とてもたくさんあります!
私が感じる一番大きくて重要な変化は『価値観の変化』かと思います。A5C96B83-EB4E-4FA7-B19B-C3B739BFE924ラダックは長年独立王国として彼らの独特の文化と生活を営んできました。
そこでは村人たちも隣村もみんな同じくらいの生活水準で暮らし、お互いに協力しあって生きていました。それが、1974年の開国以来、多くの人・モノ・価値観が洪水のように流れ込んできました。

見たことのない顔立ちや服装の人、製品。特に携帯電話なんか初めて見た時はすごく驚いたんじゃないでしょうか(私たちもそうですが)。
名著『懐かしい未来』の著者ヘレナ・ノーバッグホッジさんも映画の中で語っていましたが、ラダック人が1年かけて稼ぐ程のお金をたった1日で観光客たちが使ってしまうことが、ラダック経済・社会・精神面に与える影響は絶大なものです。

価値観の変化について印象的なことがあります。

私がある村にホームステイをしていた時、そこの20歳前後の娘さんは、若いのに掃除、料理、畑仕事、乳搾りなど本当によく働く子で、太陽をいっぱい浴びた健康的な小麦色の肌をキラキラさせて笑う、心身ともに本当に美しい子でした。
私は何気なく「あなたって本当にきれい!」と言いました。
彼女はラダック特有のはにかんだ笑顔で「そんなことないよ」と言いました。
私は「コンジョック(マジで)!」と言いましたが、彼女は少し黙ってこう言いました。

「私はきれいじゃない。だって肌が黒いから。あなたは白くてとてもきれい。」

とてもショックな言葉でした。
そして実はその後もこれと似たようなコンプレックス抱える若者に何人も会いました。
彼女は紛れもなく美しいのに自分を卑下していました。
それは、あるひとつの価値観によって卑下させられていたと言ったほうがいいのかと思います。

ここでは『白い肌の人はきれい。そうじゃない人は醜い』という基準があり、
それではまるで世界中のほとんどの人が生まれつき醜いものと捉えられてしまうであろう価値観をフォローさせられてたんですよね。
他にも、体型・服装・所持品・喋り方・好きな曲などなど。

何が要因でこんな一面的な価値観を支持させられているのかというと、ラダックの場合は『テレビ』と『観光客』の影響が大きいのかなと思います。
例えば、ラダック奥地の村にも最近ではテレビがあるんですが、これがとても異様な光景なんです。

家畜の乾燥した糞を燃料に家のお母さんが伝統的なストーブを使い、畑で採れた野菜を調理し、白髪のおじいちゃんおばあちゃんはヤクのミルクで作ったバター茶をすすりながら平和の祈りでもあるマニ車を回して、遅くまで畑仕事をしている父親を待っている。
家族の団欒で日本、いや人間の原風景のようなほっとする安心感の中、外で遊び疲れた子供たちが帰ってきて、テレビのスイッチを入れた途端にその場の穏やかな空気が瞬時に崩れるのです。

まるで、綺麗にピンと張られた真新しい障子を土足で蹴り破るような。

テレビではひっきりなしに、隣国パキスタンとの国境争いのニュースやインド映画、CMが流れています。
ラダックの土地とほとんど結びつかないようなことばかりですが、なぜか食い入るように家族みんな一心に画面を見つめてます。
平和を愛するラダックの人々の目にインド映画の誇張された暴力シーンなど見て欲しくなくて、私は必死に「今日はご飯何?手伝おうか?」と話題を振りますが、あんまり聞いてくれません。

私もそうですが、テレビや新聞などは多くの人が見ているから「テレビで言ってる事は正しい」と錯覚しやすいんですよね。
テレビが「ここのレストランが人気」と言えば、翌日からそのレストランは大行列ですよね(笑)
肌の色に関しても、テレビに出てくるスターヒロインの肌の色、美白クリームのCM、そしてお店には海外製の美白クリームであふれていることを鑑みれば、当然そういう思考になってしまうかと思います。

また、観光客の影響ですが、これは観光客というか『観光客の選択』と言ったほうがいいのかな。

ある話をラダックの女性から聞きました。

ラダックのトイレは伝統的には環境に優しく堆肥として再利用できる『堆肥トイレ』でした。
雨が少なく、限られた水資源のラダックならでは英知だと感動したのを覚えています。

でも、近年特に主都・レー周辺、特にホテルなどではでは西洋式の『水洗トイレ』が主流です。このトイレは水を大量に使い、土地自体も吸水しにくく汚水処理力が弱いラダックでは不利どころか致命的な環境問題になりかねないシステムのように思います。

現にホテル経営者の友人は、経営の中で最も手を焼いているのが『汚水処理』だと言ってました。でも、なぜこの明らかに持続不可能な『水洗トイレ』をあえて選択せざるを得なかったのでしょうか。

その経緯は『観光客の選択』にありました。

20年ほど前までは、主都・レーのホテル(ゲストハウスなど)のほとんどのトイレはもちろん伝統的な堆肥トイレだったそうです。

ある時、サービスも立地もほぼ変わらないふたつのホテルが隣接していたそうです。
でもなぜか、片方のホテルはあまり観光客が入らず、もう一方のホテルはお客さんがよく入ったそうです。
その違いを探るべくオーナーの男がのぞいてみると、お客が入るホテルでは観光客が西洋人が多いことから『西洋スタイルのトイレ=水洗トイレ』を設置していたらしいのです。

これを知った周りのホテルでは次々に水洗トイレを設置していったらしいのです。
たしかにトイレは国ごとに色々こだわりが出やすいポイントだと思います。

ただ、何が言いたいかというと、私たち『観光客の選択』もっというなら『何に価値を感じてお金を使うのか』がその土地の未来を変える選択になりかねないということをこの話から強く感じました。

例えば、目の前にあるミネラルウォーターを買うことで、少なくとも最終的にはどこの誰にお金がたどり着くのか、そしてできるならそのお金がどう使われるのかまで考えられる責任感のある消費者になりたいです。

観光客の与えた影響は悪くも良くも絶大なものだと認識していますし、だからこそ、これから自分がラダック含めてどこか訪ねる時は、自分が与える影響を考え、何にお金を使うのかという感覚を研ぎ澄ませようと思っています。

そして、ラダックと日本をつなぐ橋の入り口で微微微力!ながら関わらせていただいている身としては、少なくとも自分の出会った人々にはこのお話はうざったがられても語らせていただいています(笑)

Q17.ラダックを旅する際に心がけていることはありますか?

A.具体的にはなるべく土地のものを食べ、買い物をし、褒めまくる!(SNSなどを使って褒めます♪)
トイレもなるべく伝統的な堆肥トイレを使う。
あと、これは日本人のおばあちゃん(ジュレーおばあちゃんこと石賀美雪さん)直伝ですが、『滞在中のゴミを持ち帰ること』です。

ラダックにはちゃんとしたゴミ処理施設がなく、チョグラムサルという街を山間に北上した荒野に雑破にゴミを捨てて行くだけで、数日に一回、そのゴミ溜めで働いているというインド人がガソリンを撒き火をつけて処分するという劣悪な状況なのです。
(詳しくはYoutubeに『ラダックゴミ処理施設2016』という題名で載せています。)48399B63-D6ED-40DB-A49C-6F1C97C16BC4プラスチック処理能力のないラダックで毎日大量のプラスチック製品が流入している事実は、見方を変えれば、美しいラダックが外国製品のゴミ箱にされているといっても過言ではないかと思います。

私がラダックでの6ヶ月間の滞在を終えて溜まったゴミの量は意外に少なかったです。
紙類は燃やしたり、生ゴミは埋めたりして処理していたので、小さな日本のコンビニの袋ひとつで収まる程度でした。10475333-523D-4E6B-8289-2A9209BE9AA3帰りにレーの空港で、そのゴミ袋をリュックの後ろにぶーらぶーら下げて搭乗手続きをしていると、係りの人が私の肩をポンポンと叩いて「あそこにゴミ箱あるよ」と教えてくれました。
私は「いやこれは日本に持って帰るよ。ラダックにはゴミ処理施設がないから」と伝えると、なんとその場にいた周りの人が拍手して讃えてくれたんです。とてもいい気分でした(笑)
結局そのゴミには愛着が湧いて、帰国後1年半くらい取っておきました。(というか捨てるの忘れていました。)

Q18.ラダックならではの面白い光景があれば教えてください。

A.私たち日本人から見たラダックは色々と面白いことだらけです!

朝起きると鼻くそを「フン!」って出してたり、犬や猫を全然可愛がらなかったり、家畜にスパルタだったり、楽しくなさそうに何時間も踊っていたり、無茶振りが多かったり、それでいて反応が薄かったり。303C4CE9-2BFE-4662-8C2D-70BB171783B5また、ダライ・ラマ法王の説法の際、法王様の登場時とお祈り時は真面目なのに、
メインの説法の時は携帯で話したり、寝ちゃったり、ご飯食べたり、ピクニック気分だったり…。諸々、「え!?」と思いました。219F85AD-71E0-4F77-89B1-E014B951C1DBあと、普段穏やかで呑気なラダック人男性はほぼ全員『スピード狂』です(笑)
親の死に目に会うのかってほど車を飛ばします!
一歩間違えれば崖の下に真っ逆さまのようなところでもしっかり攻めます!そしてみんな運転がうまし!

ラダック人女性は、昔の日本人みたいにシャイですが、「誰がかっこいい」とか「あの家はお茶を出してくれない」とか、噂をすることが好きです。
おったまげたのは下ネタ!奥地に行けば行くほどゲスいです。
まさにギャップです。ギャップに驚かされます、いつも。63206D9B-ED80-4FB4-903F-608EE124C57DQ19.ラダックは今後どのような発展を遂げていくと思われますか?

A.ラダックは今、激動の時代です。
『伝統的地域コミュニティ主体の生活』と『近代的なグローバル経済(貨幣)主体の生活』という大きなふたつの波の渦中です。
両方の波は良い面も悪い面もありますが、どちらかに偏ったり、短期的な視点で物事を見てしまった時に重大な社会問題が生じると思います。C958DDFB-F873-4341-BA9A-C380F7E187A4仏教にこのような話があります。

お釈迦さんは、修行中に厳しい苦行をすれば悟りがひらけると信じ、6年間過酷な苦行をした果てに心身ともに疲弊し、「ここに悟りの道はない」と、苦行を辞める決意をしました。

ある日、小川で顔を洗っていると、近くの村に住む少女が弱ったお釈迦さんにミルク粥を差し出したそうです。
その粥で精力がみなぎったお釈迦さんは、菩提樹の下で静かな瞑想を行い、悟りをひらいたそうです。

お釈迦さんが悟りをひらけた大きな理由は『中道』にあるそうです。

『苦しいことばかりに没頭したり、逆に快楽に邁進したりと、どちらか一方に偏ってはいけない』ということです。

例えば、ラダックの杏やそのオイルは特産品として観光客にも大人気で、しっかりとビジネス戦略を立ててマーケティングなどを行えばかなりの資産を築けそうですが、とある村のお母さんはこう言いました。

「少しお金が入ればいい。これで十分。杏は腐れば鳥や虫が食べるわ。」

ラダックの人々の中立的な態度は一見すると怠惰だったり煮え切らないようにも見えますが、『足るを知ること』そして『人とのつながり』を大事にしている彼らが選ぶ未来に不安はありません。9014B67B-2807-4E2D-8CFF-4BCDFD1FD83E特に、現在は『SECMOL(Students Educational Cultural Movement of Ladakh)』という文化教育運動の中心になっているNGOがラダックに適した素晴らしい未来を牽引しています。
他にもヘレナさんが主催した『WOL(Women Alliance of Ladakh)』や『Local futures』など、素晴らしいリーダーグループが存在しています。
そして、ラダックの真ん中に『宗教(精神)』がある限り、他の先進国と同じ轍を踏むことはないかと思います。9E8B3B4D-0950-46DD-A389-A6BDC9BDF599いつも、私たちがラダックから学ばせてもらっています。
外部からの影響は大いに受けつつも、芯をブラさなければバランスのとれた調和の中でラダックは将来的に発展を遂げていくと思います!3859C602-992C-49BF-940D-96CDA6B2511CQ20.今後の活動予定や目標を教えてください。

A.秘境と言われるラダックの素晴らしさを日本だけでなく、世界中に伝えたいです。
目標は特にありませんが、ラダックのパンゴン湖のような、透き通って満ちて、静寂の心で日々生きていきたいと日々精進しています。いえ、したいと思っています(笑)
まだまだ玄界灘ですが…(笑)F4F89EF4-3371-4734-A750-2B1FA23049BF

せりなさん、このたびはたくさんのお話しをありがとうございました!
それでは次回もお楽しみに〜!